備前焼は、釉薬を使わない焼き物として知られている。釉薬とは、陶器の表面に塗るガラス質のコーティングのことで、多くの陶器はこれによって色と光沢を得る。備前焼はそれを使わず、薪窯の中で降りかかった灰が自然に溶けて表面に模様を作る「自然釉」によって、独自の表情が生まれる。

自然釉の仕組み

薪窯では、松の薪を燃やすことで大量の灰が発生する。この灰が高温の窯の中で舞い、陶器の表面に降り積もる。1200度を超える温度で、灰は溶けてガラス質になり、陶器の表面に自然な釉薬として定着する。灰の量、窯の中での位置、焼成時間によって、一点ごとに異なる模様が生まれる。これを「窯変」と呼ぶ。

備前土の特性

備前焼に使われる土は、岡山県備前市周辺で採れる鉄分を多く含む粘土だ。この土は焼成後に赤みがかった茶色になり、自然釉の緑や灰色との対比が備前焼独特の色合いを生む。また、備前土は吸水性が低く、焼き締まりが強いため、花瓶として使った場合に水が染み出しにくい特性がある。

一輪挿しとしての使い方

備前焼の一輪挿しは、花との相性が独特だ。釉薬がないため、花の茎から出るアクが土に吸収され、水が腐りにくいと言われている。夏の切り花、特に朝摘みのアジサイや野の花との組み合わせが良い。水は毎日替え、使用後は乾いた布で拭いて乾燥させること。長く使うほどに、土の表面が花のアクで変化し、独自の風合いが出てくる。

土楽の窯について

Hushed Bay Tideが取引する「土楽」は、岡山県備前市の小さな窯元で、窯主の森田健一が一人で運営している。年に二回の窯入れを行い、一回の焼成で作れる点数は限られる。Hushed Bay Tideへの入荷は、毎回窯入れのタイミングに合わせて行われるため、在庫が切れると次の窯入れまで補充できない。今シーズンの一輪挿しは3点のみの入荷だ。

備前焼の一輪挿しは、今シーズン3点のみ。来店の際には、実際に手に持って重さと質感を確かめていただきたい。