万年筆を使う人が和紙のノートブックを避けることがある。インクが滲む、裏抜けする、という経験からだ。しかし、紙の種類によってその性質は大きく異なる。岐阜・美濃市の「白川紙房」が漉く楮和紙は、90g/m²という厚みと、楮繊維の密度によって、万年筆のインクに対して優れた適性を持つ。

楮和紙の繊維構造

楮(コウゾ)は、和紙の原料として最も一般的な植物のひとつだ。楮の繊維は長く、絡み合いが強いため、漉き上がった紙の密度が高くなる。この密度の高さが、インクの横方向への滲みを抑える。また、楮繊維は表面に微細な凹凸を持ち、インクを適度に保持する。洋紙のようにコーティングされていないため、インクが紙の繊維に自然に定着する。

90g/m²という厚みの意味

一般的なノートの紙は70-80g/m²程度だ。「白川紙房」の楮和紙は90g/m²で、これは万年筆のインクが裏面に影響を与えにくい厚みの目安とされる。実際に、ペリカンM400にブルーブラックを入れて書いたところ、裏面への影響はほとんど見られなかった。ただし、インクの種類によって滲みやすさは異なるため、顔料系インクよりも染料系インクの方が相性が良い傾向がある。

書き心地の特性

楮和紙の表面には、洋紙にはない独特の抵抗感がある。ペン先が紙に引っかかるような感触で、これを「紙の歯ごたえ」と表現する人もいる。この抵抗感は、書くスピードを自然に落とし、文字に集中させる効果がある。速記や大量のメモには向かないが、日記や手紙、じっくり考えながら書く用途には、この感触が書く行為そのものを豊かにする。

糸かがり製本の利点

「白川紙房」の和紙を「綴屋」が糸かがり製本で仕上げたこのノートブックは、ページが完全に開いた状態で固定される。見開きで使う場合、中央のページが浮き上がらないため、書きやすい。糸かがりは接着剤を使わないため、長期保存でも背が割れにくい。A5サイズで、持ち歩きにも机上での使用にも適した大きさだ。

現在のコレクションに5冊のみ在庫がある。来店の際には、実際に試し書きをしていただける紙のサンプルをご用意している。